IF India's Blog

バンガロールでシード投資を行うIncubate Fund India パートナーのブログです。

投資家の見方:GMV→Unit Economicsへ

フードテックで名を馳せていた、TinyOwlが先日ムンバイ以外の都市でのサービスをシャットダウンした。

先月にはハイパーローカルの雄、PepperTapもシャットダウンの上でのピボットを余儀なくされている。


どちらも、大型の資金調達をして、華々しかったスタートアップだ。

(PepperTapは$40M、TinyOwlも$25M以上調達)

その他でも、ハイパーローカルやフードテックの会社は軒並み厳しくなっており、レイオフや各都市でのシャットダウンのニュースが続いている。

 

この辺のニュースが出るのと前後して、少し前からインドの投資家の目線が、「GMV重視」から「Unit Economics重視」へとシフトしてきている感覚がある。

 

少し前までは、インドの投資家も起業家も、結構GMVの成長に重きをおいてビジネスを見ていた様に感じていた。

「確かに今は利益でていないけど、これだけ巨大な市場なのだから、GMV伸ばし続けてライバル蹴落とせば、どこかで利益出せるはず」という見立てのもと、お金じゃぶじゃぶつぎ込んで成長させた。でも、一向に利益出ないで、最後には苦しくなりました。」というのが、前述の2社のケースだと思う。

 

インフラが整っておらず、小規模のマーケット/店舗が分散しているインドにおいては、ハイパーローカルもフードデリバリーも、どちらも明確に消費者ニーズのある領域だ。

だって、買い物行くのはメチャクチャ不便だし、コンビニはほぼ存在しないと言っていいし、道は渋滞しているし、商店/レストランは分散しているし、etc。

だから、お金を投下してマーケティングすることで、GMVはある程度伸び続けたのだと思う。

 

一方で、ケチでミーハーなインド人(失礼!)をユーザーとして獲得するには、有効なのはディスカウントとマス広告であって、過当競争に陥ったバーティカルにおいてはCACが高くなる。

同時に、似た様なアプリが沢山存在するので、インドのスマホ容量の小ささとも相まって、すぐ使われなくなる=LTVはそこまで伸びない。

結果、「GMVは伸びてもどこまで行っても利益が出ない」という構図に陥ってしまっているスタートアップが多いのだと思う。

 

ハイパーローカルやフードテックは「人やモノを動かす」という事がビジネスの根幹にあるため、どうしても重たいビジネスモデルになってしまい、影響が顕著に出た。

だけど、その他の領域も「CAC高い割にLTV低い=利益でない」という構図は多くのインドのBtoCサービスに共通だと思われ、今後も厳しくなってくるところは沢山出てくる様に思う。UrbanClapやHouseJoyといったサービスコマース系もそろそろ厳しくなるんじゃないかな。

 

そんな中で、投資家の目線がUnit Economics重視になるのは自然な流れ出し、むしろもっと早くそうなるべきだったのかなとも思う(もちろん、ずっとそこを重視して見続けている投資家もいる)。

 

でもそうなってくると、ピュアなBtoCサービスだと、投資テーマとなる領域を見つけるのはインドではなかなかに難しくなってくる。

ので、今年は優秀なエンジニアが安く活用出来るという点でインドがコストメリットを享受出来、かつグローバルなマーケットを狙えるという意味でのSaaSや、Unit Economicsがまわしやすく、スティッキーで利鞘も大きめになりやすいBtoBコマースなどにお金がまわりやすくなる流れになるのかなと思ったりしている。

 

いくつかの投資家からは、「今年はシード投資家にとっては(昨年に比べると)明らかに良い年になって行くと思う。一方で、今は大きく潮目が変わるタイミングでもあるので、しばらくは焦らずに様子見のスタンスでいる。」とのコメントも聞こえる。

 

シードの投資家にとっては、自分たちの個社に対する選球眼と同時に、次以降のラウンドにつなげていくという意味で、マーケット全体の流れ、投資家全体のマインド/トレンドというのも重要になってくると思う。

この辺は、現地の投資家や起業家とディスカッションを重ねる事でしか見えてこないので、意識して継続していきたいと思う。

 

個人的には、ネットが入り込む事で、人々の生活に劇的に変化が生まれるというBtoCのサービスってやっぱり好きなので、ここをディスカウントとマスマーケティング偏重にならずに、しっかりスケールさせられる美しい会社に出会いたいなと思う・・・けど、なかなか現実は甘くない。頑張りますー!